今回は造影CTのシミュレータを紹介します。
1. ソフトウェアの概要
今回紹介するソフトウェア(造影シミュレーションソフトおよびpCOP)は以下の書籍に付属しています。ソフトウェアの書籍購入者限定で公開しているので使用したい方は書籍を買いましょう。
書籍はこちらからご購入ください。
これらのソフトウェアはwebブラウザで実行可能です。ちなみにpCOPはpatient-specific contrast enhancement optimizerという意味です。
それぞれの用途は以下の通りです
造影シミュレータ:様々な入力をもとに対象臓器のtime density curveを描く。
pCOP:入力した目標値(造影効果)を得られるための最適な造影剤投与量を算出する。
また、これらのソフトウェアは医療機器プログラムとしての認可を受けていない(医療機器非該当品)ため臨床用ではなく、あくまで学習、研究目的で自己責任で使用しなければなりません。
ソフトウェアは造影CTにおいて最適なヨード量を算出し、患者毎の個人差によるバラつきを減らすことを目的にしています。ただし、対象は動脈であり実質臓器まではカバーしていません(効果が確認されていない)。
2. 造影効果に与える影響
そもそもなぜ造影効果が安定しないかというと以下の3つが関係するからです。
1.造影剤による影響(注入量、注入速度・時間、濃度、生食フラッシュ 等)
2.患者の個体差による影響(体格、心拍出量、臓器の血流、腎機能、穿刺血管、体液量 等)
3.撮像技術による影響(管電圧、撮像タイミング 等)
1.造影剤による影響
多くの教科書に記載されているように(経験的にもわかるように)、動脈系では造影剤の注入量が多いほど造影効果が得られる時間が長くなる、注入速度が速いほどピークまでの時間が短くなり、かつ造影効果が強くなる、ヨード濃度量が濃いものほど造影効果が強くなる、生食フラッシュすることで注入部付近に留まる造影剤を体循環に回すことができるため造影効果が強くなる、ことは周知の事実です。
2.患者の個体差による影響
生物学的要因で体重は最も造影効果に影響を与えます。投与量の決定には除脂肪体重の方が良いというデータもあるようですが簡便さから体重が用いられています。
他にも心機能によって血流が変化するため造影効果に影響します。具体的には心拍出量が多いほど注入から造影ピークまでの時間が短くなり、心拍出量が少ないと造影ピークまでの時間が長くなり、かつ濃染が強くなります。
今回紹介するソフトウェアはこの心拍出量を考慮します。
3.撮像技術による影響
これについても周知の事実の通りです。管電圧が低いほどコントラストが高くなります。撮像タイミングは目的部位の造影剤濃度が最も高くなる時間にスキャンが行われるようtest injectionなどが用いられます。
3. 造影シミュレーションソフト
こちらのページから利用申請を行う。ソフトウェアの使用は書籍の購入者のみが可能。
公式ページにアクセスする。
中央左のContrast Simulationをクリック。pCOPの場合は中央右のpCOPをクリック。
利用規約に同意し、ユーザー名とパスワードを入力する。
造影シミュレーションソフトウェアに以下の項目を選択、入力する。
※インターフェースは変更される可能性があります。
・造影剤の種類
濃度や粘稠度、浸透圧などが決定する。
・造影剤量 [ml]
・注入時間固定か注入速度固定か
注入時間固定を選択した場合、注入速度を入力しても無視される。
同様に注入速度固定を選択した場合、注入時間を入力しても無視される。
・生食フラッシュの量 [ml]
生食は造影剤と同じ速度で注入される。
・患者情報(身長[cm]、体重[kg]、心拍出量[%])
心拍出量は100%を基準とした相対値。標準体型(170cm/60kg)では4.25 L/minとしている。
・撮影管電圧 [kV]
GE社の64列CT Light Speed VCTを基準としている点に注意。
・シミュレーション時間 [s]
注入開始よりシミュレーション時間分だけtime density curveを描く。大きな値にし過ぎるとシミュレーションに時間がかかる。
・対象臓器
time density curveを描く臓器を選択する。
シミュレーションの結果、以下の情報が得られる。
・選択した対象臓器のtime density curve
・Time density curveの情報をもとに作成したシネ画像
・入力値(確認用)
4. pCOP
pCOPは入力した目標値(造影効果)を満たす最適化条件を探すため、上記の造影シミュレーションソフトの計算を繰り返します。
こちらの画面中央右のpCOPをクリック。ユーザー名とパスワードを入力する。
入力する値は上記の造影シミュレーションソフトとほぼ同様ですが、以下の違いがあります。
・入力CT値 [HU]
・持続時間 [s]
・最大造影剤量 [ml]
使用できる造影剤の量には制限があるためです。
・シミュレーション時間
Time density curveの立上りから立下りまでが含まれていないと最適化が行えないので注意。
持続時間とは何かというと、対象血管・臓器が入力した濃染(CT値)を上回る時間です。
上手くいけば持続時間が満たされる最適条件(造影剤量)が算出されます。失敗した場合にはOptimized?の欄がNoとなります。
心拍出量に関しては推定式がソフトウェアの中に組み込まれており、身長と体重を入力することで大まかな推定値が入力されるようになっている。心拍出量が測定可能なデバイスがある場合はその値を手入力することで精度があがります。
出力結果
このpCOPで求めた造影剤量は体重から求めた量よりも多いかもしれませんし、少ないかもしれません。
その量を使うことによって個体差(標準偏差)が小さくなると報告されています。
皆様も使用して有益な情報が出たら学会発表してください。